TOP > これまでの活動 > ヒナ・タマゴ殺し、営巣放棄の事例調査

2006年に参加者からツバメ観察全国ネットワーク事務局に寄せられた質問には、成鳥ツバメがヒナやタマゴを殺してしまうことと、親ツバメが営巣を放棄してしまうことについての問い合わせが多くありました。この問題について、ツバメブログと参加者アンケートで集まった情報をまとめました。


ヒナ・タマゴ殺し

ヒナ・タマゴ殺しについては、アンケートと、それ以前に質問メールなどでお寄せいただいた情報の中から、確実性が高いと考えられる事例が10件ありました。

ツバメのヒナ・タマゴ殺しは、ペアになる相手を見つけられなかったオスの成鳥が行っていることが、これまでにも海外の研究で指摘されていました(※)。ペアになるメスを得られオスは、すでに子育てをしているメスに自分の子供を産ませようとして、そのメスの子を殺すというのが、この一見異常に見える行動の理由だと考えられています。子供を失ったメスは再び発情するため、相手のオスを追い払えば自分がそのメスと繁殖することができます。さらに、他の野鳥でもいえることですが、子育てに失敗したペアは離婚しがちな傾向にあるらしいので、そのこともヒナ・タマゴ殺しをしたオスに有利に働きます。

しかし報告された事例の中には、親ツバメ自身が自分のヒナを殺しているのではないかと疑われる例もあることから、ヒナ・タマゴ殺しの原因には従来指摘されていたこと以外にも理由があるのかもしれません。

ヒナ・タマゴ殺しが起きる時期は、10件のうち8件が6月までに起きています。これは営巣放棄の例とは反対に、エサが豊富な時期だからこそ、子供を殺して新たに子育てを開始することができるからだと考えられます。7月や8月になると、ヒナ・タマゴ殺しをして再び卵を産んでも、もう育てる時間がないので、このような行動が起きる頻度は小さくなるものと思われます。

ヒナ・タマゴ殺しについてアンケートやメールで寄せられた情報は、こちらをご覧下さい。

ヒナ殺しの前後でオスツバメが入れ替わっていた例(上記リンクの事例8)
上がヒナが殺される前のオス、下はヒナが殺された後のオス。ヒナ殺しをしたオスはその後、巣作りを始めたり、繰り返しメスに近寄ろうとしたものの、メスは立ち去ってしまった。
【写真 瀬戸智子】


※ Møller A.P. 1988. Infanticidal and anti-infanticidal strategies in the swallow Hirundo rustica. Behavioral Ecology and Sociobiology 22: 365-371.

営巣放棄

2006年9月末にツバメネット参加者全員にアンケートをお願いしたところ、営巣放棄と思われる事例が9件と寄せられました。そのうち2件を除いて、営巣放棄は7月以降に起きています。このことから、7月に入るとツバメが食べている飛翔性昆虫の数が減ることや、南への渡り時期が近づくことなどが、営巣放棄に影響していると思われます。

営巣放棄についてのアンケート結果はこちらをご覧下さい。