ツバメにとってよい営巣環境はどんな場所でしょう?

巣作りするツバメにとって一番大事なのは、ヒナが無事に巣立つかどうかです。そこで、ツバメ日記の巣立ち記録から、たくさんのヒナが巣立つ場所はどんなところかを調べました。

この分析をするために、国土地理院のホームページで公開されている土地利用細分メッシュデータを利用しました。土地利用細分メッシュデータは、全国を100メートル区画のメッシュに分けて、それぞれの環境を11種類の分類で表しています。

下図のように土地利用細分メッシュデータとツバメ日記に登録された巣の位置を地図上に重ねて、どの土地利用タイプにある巣で、巣立ち数が多いかを分析します。

下の表は、巣の周り100メートル四方に一番多い土地利用タイプは何かを表しています。ヒナを育てているツバメは主に巣の周囲数百メートルでエサの昆虫を集めていますので、このような巣のすぐ近くにどのような場所があるのかが重要です。

巣がある土地タイプ 平均巣立ち数 巣の数
4.39 289
その他の農用地 4.40 67
森林 4.25 122
荒地 5.00 6
建物用地 3.89 1026
幹線交通用地 3.96 50
その他の用地 4.06 145
河川地及び湖沼 4.08 61

このように、水田や畑、森林が重要らしいことが分かりましたが、次に、各環境で巣立つヒナの数を見てみましょう。下のグラフのように、巣の周辺にエサになる虫が多い環境だと、5羽が巣立つ巣が多くなることが分かります。

なお、河川や湖沼の巣立ち数は4羽第であまり多くありませんが、例数が少ないのであまり正確な巣立ち数とはいえない可能性があります。

一方、ツバメ日記の登録が一番多い「建物用地」というのは市街地域ですが、周囲に虫が少ないためか、4羽の巣立ちが一番多くなっています。「交通用地」は大きな道路や駐車場などを表す区分と思われ、巣の登録自体が少ないのですが、ここも4羽の巣立ちが多くなっています。

以上に見てきたように、水田・農地・森林など、自然のある場所の方が巣立つヒナの数が多く、都市部では少ないという結果になりました。