原発事故周辺での卵の未孵化率調査

 福島第一原子力発電所の周辺で、放射線量とツバメの卵の孵化状況を調べました。簡単な調査ですが、結果を報告しておきます。この調査は、渡辺仁佐藤信敏、神山和夫が行いました。

調査目的
ツバメの巣のセシウムによる汚染が報告されています。そこで、もし放射線の影響があるとすれば、巣の放射線の暴露を直近で受ける卵の孵化率が大きく低下する等の影響があるかもしれないと考えて、調査を企画しました。

調査方法

 繁殖の終わったツバメの巣の中に、未孵化の卵が残されていないかを調べ、同時にその巣の放射線量を測定しました。繁殖に利用した巣かどうかは、巣の下に多量の糞が溜まっていることと、巣の中に羽毛で作った産座が残されていることとで判定しました。ただし、繁殖状況そのものを観察していないため判定には不確実さがあります。巣の放射線量は、線量計(堀場製作所PA-1000)を巣正面の外郭部に接触させ、60秒以上経過後の安定した時点の値を記録しました。

調査地域
 2012年7月25〜26日と9月8日に、福島県内の次の地域で調査を行いました。(1)伊達市霊山町、(2)飯舘村、(3)川俣町山木屋、(4)浪江町津島地区、(5)葛尾村、(6)南相馬市小高地区、(7)二本松市百目木、(8)楢葉町。

背景は「福島第一原発事故の放射能汚染地図(八訂版)」による2011年9月の地上1mの放射線量。http://kipuka.blog70.fc2.com/blog-entry-570.html
早川由紀夫の火山ブログ 閲覧日2013/8/17


 
 Horiba Pa-1000で巣の放射線量を測定しているようす。


調査結果
 調査した巣は42巣。そのうち未孵化卵が見つかった巣は3巣でした。巣の放射線量は0.216〜5.491μSv/hで、最高値は浪江町津島地区の検問所に利用されている建物の駐車場にある巣でした。放射線量が高い地域の巣の数が少ないため、巣の放射線量と未孵化卵との関係については、判定することはできませんでした。

 巣の放射線量(μSv/h) 調査した巣  未孵化卵の数 
 0〜2 36 1
 2〜4  2  1
 4〜6  4  1

巣の放射線量と未孵化卵の数

留意点
・ツバメの未孵化卵は平常でも、しばしば観察されるもので、珍しい現象ではありません。
・今回の調査は警戒区域以外での調査であり、さらに高放射線量の地域での孵化率への影響はわかりません。